ソルジャーの日記

平凡な学部卒サラリーマンの、平凡な人生への、平凡な考察

10年後も覚えているもの、2週間で忘れられるもの。

 吉本興行所属のタレントが、芸能事務所を通さない活動をし、このうち、宮迫博之さんらが特殊詐欺グループから金銭を受け取っていたと報道されました宮迫博之田村亮両タレントの会見以降は、吉本興業トップの進退および同社とタレントの契約形態に論点が移っているように感じますが、個人的には、特殊詐欺(振り込め詐欺)と聞いて思い出すことがあったので、文章にしてみました。


 実は、僕の実家も振り込め詐欺の被害を経験しました。
今から10年近く前、私の母の名前宛にハガキが届きました。差出人は匿名の原告を名乗る人物です。これから貴方(母)に対して訴訟を起こします、という通知の体裁をとったものでした。母は素直にも、ハガキに掲載された連絡先に電話をかけ、詳細を確認している様子でした。小学生だった私は状況が理解できず、ただ、固定電話で詐欺グループと話をする母の傍に立っていました。
"私は原告ではないので、訴訟内容は分かりません。男女関係じゃないですか?"
と適当なことを話す詐欺師、
"男女関係"
 母がそれをリピートする光景を覚えています。結局、専業主婦の母は生活費の口座から、50万円を引き出し、指定された口座に振り込んだのでした。当時父は海外出張中で、母と私たち小学生のきょうだいの限られた知能では詐欺を未然に防ぐことができませんでした。


 詐欺が発覚した後、家計負担者の父と、専業主婦の母との間にどういったやり取りがあったかは分かりませんが、母は罪滅ぼしのようなことを始めました。夜中の3時代に起きて家事をする。そうすると日中に家事をするよりも電気代が浮くらしいです。そうやって雀の涙のような額を毎日節約する、苦行のような生活を始めました。振り込め詐欺に騙されるような人物である母が、必死に考案した計算式を、僕は正確に思い出せませんが、母が何年間も睡眠時間を削ってようやく実現するような、途方もないものでした。


 10年経った今日、両親は離婚していますが、家族崩壊の原因の原因は、あの振り込め詐欺だったように思います。
 10年間を簡単に要約すると、睡眠不足の母は昼夜逆転し、日中うとうとしていました。気分も不安定で時々爆発して、時々家族の誰かを強く非難していました。母が愛用するラジオからは、よく中島みゆきの音楽や、テレフォン人生相談が聞こえてきました。気持ちの余裕が次第に母を活字から遠ざけ、そのせいか、母の発話がイロジカルになり、周囲の気持ちも母から離れていったように思います。


 誰かが振り込め詐欺に気が付いていれば、父が被害額を弁済しようとする母を止めていれば、母が無駄な早起きでなくパートを見つけていれば、とつい考えてしまいます。


 宮迫さんへの糾弾の論調が忘れ去られるような、早すぎる川の流れの中に、僕の生産性のない回想を浮かべて供養してやりたいです(2019/07/26)。